病院指標の公表

DPC

2015年度に退院された患者さんの集計結果をお知らせします。

【用語解説】

・DPC(Diagnosis Procedure Combination)【診断群分類】とは:
入院医療における診断群分類に基づいて評価される入院1日当たりの定額支払い制度で使用される分類で、その入院期間のうち最も医療資源を投入した傷病名を基準に、手術を行ったかどうか、定義された処置・検査等を行ったかどうかで、1日当たりの入院費が決定されます。その際14桁のコードがつきます。
例えば、050070xx9700xxは、頻脈性不整脈、手術あり、手術・処置等1なし、手術・処置等2なしとなります
・最も医療資源を投入した傷病名とは:
当該入院期間に、医療従事者の関与・材料・薬剤・医療費・時間を最も使用し、総合的に判断した傷病名です。
年齢階級別退院患者数
年齢区分 0〜 10〜 20〜 30〜 40〜 50〜 60〜 70〜 80〜 90〜
患者数 425 113 57 92 123 274 678 999 1282 508

2015年度(平成27年4月1日~平成28年3月31日)に退院された患者さまを年齢別に集計しております。この「年齢」は、入院時の年齢を採用しております。

年齢構成ですが、地域の高齢化に伴い、70歳以上の退院患者が76.18%と約3/4を占める結果となっております。
その中で、地域の小児医療も担っており、9歳以下は9.33%でした。

診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)

2015年度に退院された、DPC対象の患者さんのDPCコード14桁別に集計し、各診療科別の上位5位までを表示しています。
例えば前立腺生検や鼠径ヘルニア手術をされた方、労災または自費による入院等、包括対象外の患者さんは集計の対象外となり、反映されていません。
※「-」は、症例数が10件未満のため非表示となっています。

計算式

・平均在院日数=
分子:該当するDPCコード別の総在院日数
分母:該当するDPCコード別の患者数
・転院率=
分子:DPC調査結果における、退院先(他の病院・診療所への転院)となった件数
分母:該当するDPCコード別の患者数
DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数
(自院)
平均在院日数
(全国)
転院率 平均年齢
040080x099x0xx 肺炎、急性気管支炎、急性細気管支炎(15歳以上) 113 15.56 14.34 12.39% 73.65
040081xx99x00x 誤嚥性肺炎 75 21.44 21.69 38.67% 71.05
040110xxxxx0xx 間質性肺炎 33 16.97 20.63 9.09% 73.00

最近の厚生労働省の死因統計では、肺炎は悪性疾患・心疾患に次いで第3位です。特に高齢者の誤嚥性肺炎はよく起こり、改善が悪く、何度も繰り返すのが特徴です。このため当院では肺炎治療にかなり力を注いでおります。感染症の知識が深く、治療方針を決定するICD(感染防御ドクター)の資格を3名有し、指導に当たっています。
間質性肺炎は免疫機序の異常で起こる肺炎で、その原因は、不明なもの、膠原病に伴うもの、薬剤などによるものなど多岐にわたります。また類似の所見を呈する感染症もあります。このため原因をきちんと調べ、適正な治療を行う必要があります。採血検査やCT検査、気管支内視鏡検査などの結果を総合して判断する必要があり、かなりの知識を経験が必要です。当院には呼吸器内科専門医が2名在籍し、そのうち1名は指導医でもあり、当院は呼吸器学会認定施設となっております。

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数
(自院)
平均在院日数
(全国)
転院率 平均年齢
060340xx03x00x 胆管(肝内外)結石、胆管炎 40 10.95 10.93 12.50% 77.68
060102xx99xxxx 穿孔または膿瘍を伴わない憩室性疾患 24 7.17 7.91 0.00% 60.25
060210xx99000x ヘルニアの記載のない腸閉塞 21 10.10 9.17 4.76% 70.43

胆管炎は、胆管(胆汁の流れる通り道)の閉塞機転によって発症し、原因として一番多いのは胆管結石です。症状としては発熱・腹痛・黄疸が出現し、重症となるとさらにショック症状(血圧低下)、意識障害も出現し、生命にかかわることもあります。当院では胆管炎が疑われる患者さまが受診された場合、早急に腹部エコー検査、CT検査、MRI検査、血液検査などを行います。診断と並行してガイドラインに基づいた重症度判定を行い、中等症以上の胆管炎と診断した場合には夜間や休日でも早急に内視鏡的胆管ドレナージを行います。

大腸憩室症は、腸管壁が腸管外側に嚢状に突出した状態を指します。食生活の欧米化や高齢化に伴い増加傾向にあるとされています。大腸憩室炎と大腸憩室出血が2大合併症です。憩室炎は腹痛や発熱で発症し、炎症を起こした憩室の部位に圧痛や筋性防御がみられます。腹部CT検査や血液検査で憩室炎が疑われた場合には、入院の上絶食、補液、抗菌剤による加療を行います。膿瘍、穿孔などを合併した憩室炎の場合には外科医に早急に連絡し手術治療を行います。憩室出血は下部消化管出血の中で最も頻度の高い疾患です。腹痛を伴わない血便で発症することが多く、最近では高齢化に伴い抗凝固剤を投与されている方が多いため憩室出血も以前に比較して多い印象を受けます。検査としてはまず腹部CT検査にて出血部位をある程度特定したのち、大腸内視鏡検査を行います。出血部位が同定できれば内視鏡的に止血を行います。ただ内視鏡的に出血源が特定できず、出血が持続する場合には血管造影治療や外科的治療を考慮します。しかしながら自然止血することも多いため、外科的治療にまで至る症例はほとんどありません。

機械的イレウス(腸閉塞)は、大きく単純性イレウスと複雑性(絞扼性)イレウスに大別されます。イレウスの症状として腹痛、腹部膨満、悪心、嘔吐、排便排ガスの停止などが出現します。イレウスが疑われた場合には、腹部単純X線、腹部エコー検査、腹部CTを行い、診断とともにイレウスの原因を調べます。イレウスの原因としては過去の手術による腸管癒着が最も多く、血流障害のない単純性イレウスの場合には胃管挿入やイレウス管による腸管減圧を行います。多くの症例では保存的治療で改善をみますが、改善傾向が乏しい単純性イレウスの場合には外科医と相談の上、手術治療を行うこともあります。腸管血流障害を伴う複雑性イレウスの場合には緊急性を要しますので外科医と早急に連絡を取り、手術治療を行います。また、最近大腸癌による大腸イレウスが増加傾向にあり、内視鏡を用いて経肛門的イレウス管を挿入したり、金属ステントを留置して緊急手術を回避することもできます。

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数
(自院)
平均在院日数
(全国)
転院率 平均年齢
050050xx99100x 狭心症、慢性虚血性心疾患 68 3.43 3.07 2.94% 78.04
050130xx99000x 心不全 49 21.90 18.30 18.37% 79.39
050050xx0200xx 狭心症、慢性虚血性心疾患 21 6.95 4.87 0.00% 75.95

循環器内科は、心臓血管病の診断、治療を中心に診療しており、主として虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、心筋症、心臓弁膜症、不整脈、大血管疾患を診療しています。
虚血性心疾患では運動負荷心電図、心筋シンチ、冠動脈CTなどで評価し、必要があれば心臓カテーテル検査、血行再建術(経皮的冠動脈インターベンション)を施行しています。心臓カテーテル検査は1泊2日~2泊3日、待機的経皮的冠動脈インターベンションは3泊4日の入院で行っています。不整脈の診断では24時間心電図、電気生理学的検査が施行可能で、適応があればペースメーカー植込み術を施行しています。また、早期の社会復帰を目指し、心臓リハビリテーションにも力を入れています。

当院には心臓血管外科がありませんので冠動脈バイパス術や弁置換術、大動脈疾患の手術が必要な場合には熊本市内の心臓血管外科併設施設へ紹介しています。また、不整脈疾患でカテーテル治療や植込み型除細動器等のデバイス適応がある方も熊本市内の認定施設へ紹介しています。

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数
(自院)
平均在院日数
(全国)
転院率 平均年齢
010060x099030x 脳梗塞(JCS10未満) 35 39.17 18.08 42.86% 77.14
010060x099000x 脳梗塞(JCS10未満) 20 34.20 15.80 20.00% 79.55
030400xx99xxxx 前庭機能障害 17 6.82 5.31 0.00% 72.35

当院神経内科では、脳、脊髄、筋肉、末梢神経の疾患に幅広く、対応していますが、とりわけ、虚血性脳血管障害(脳梗塞)は多く、年間入院患者の約半数を占めております。
脳梗塞は脳に酸素や栄養を運ぶ血管が詰まり脳への血液供給が途絶えることにより、麻痺、言語障害、意識障害がおこる病気です。当院ではこの病気に対し、内科的治療やリハビリテーションを積極的に行っております。
他にもパーキンソン病やてんかん、めまい、頭痛、認知症等にも積極的に治療を行っております。

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数
(自院)
平均在院日数
(全国)
転院率 平均年齢
110280xx02x00x 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 10 11.70 9.71 0.00% 77.30
110280xx02x00x 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 15.39
050130xx99000x 心不全 18.30

糖尿病有病率の上昇により、糖尿病による血管合併症としての腎障害は年々増加しています。また高齢化により、高血圧・腎硬化性疾患の最終像としての腎不全は年々増加しています。DPC病名として最も多いのが腎不全及び透析関連であることもそれを示唆するものです。当科では、腎不全の進行を抑制することを目的として、外来での栄養・薬剤指導を行っており、入院治療を要するような症状への悪化を防いでいます。

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数
(自院)
平均在院日数
(全国)
転院率 平均年齢
100070xxxxxxxx 2型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く。) 43 22.72 15.35 6.98% 63.93
040080x099x0xx 肺炎、急性気管支炎、急性細気管支炎(15歳以上) 36 14.97 14.34 8.33% 80.89
040081xx99x00x 誤嚥性肺炎 19 22.11 21.69 31.58% 84.00

糖尿病・内分泌科の特徴は熊本県北の糖尿病治療の中核を担う施設であり、日本糖尿病学会認定研修指導医2名を要する研修・教育施設です。また、日本内分泌学会認定教育施設の指定を受けており、現在のところ熊本県下で両者の認定を受けている施設は熊本大学付属病院および当院の2か所のみとなっています。
糖尿病については地域の各医療機関との連携も強固であり、数多くの患者さんの外来診療および必要に応じた入院治療さらには糖尿病教育目的の入院を行っています。同時に他の診療科にそれぞれの専門疾患の治療目的で入院された患者さまの中にも、併存疾患として糖尿病を有している対象が数多くおられ、並行した高度な糖尿病診療が必要とされるケースが数多く存在します。当科入院中の患者さま以外でもこのように数多くの入院患者さまの治療を補助しています。
内分泌疾患については、糖尿病のように数は多くありませんが、疾患の種類が多岐にわたり、それぞれの高度な知識が必要とされます。従いまして表面には現れにくいのですが、代表的な甲状腺疾患以外にも脳下垂体、副腎、副甲状腺、骨代謝疾患などの診断、治療が活発に行われています。

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数
(自院)
平均在院日数
(全国)
転院率 平均年齢
060335xx0200xx 胆嚢水腫、胆嚢炎等 23 10.13 7.84 0.00% 61.95
060150xx02xx0x 虫垂炎 12 9.42 9.48 8.33% 53.42
110050xx99x00x 後腹膜疾患 13.92

消化器外科症例としては、胆石症、虫垂炎、ヘルニアの症例が上位を占めています。胃癌、大腸癌症例は数は多くありませんが、鏡視下手術が多くを占めています。

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数
(自院)
平均在院日数
(全国)
転院率 平均年齢
160800xx01xxxx 股関節大腿近位骨折 118 46.64 28.70 71.19% 85.64
160690xx99xx0x 胸椎、腰椎以下骨折損傷(胸・腰髄損傷を含む。) 47 38.95 21.52 65.96% 82.04
160980xx99x0xx 骨盤損傷 29 38.91 21.26 44.83% 77.20

整形外科では、患者さまの意向により一般病棟に入院後、継続的なリハビリテーションを実施するため、当院の回復期リハビリテーション病棟へ転棟させたのち、退院となる患者さまがいらっしゃいます。そのため平均在院日数が、全国平均よりも長くなっております。

最も多い疾患は高齢者の大腿近位骨折であり、高齢化社会を背景に全国的に増加傾向にあります。多くは転倒にて発症し、大腿骨転子部骨折、大腿骨頚部骨折、大腿頚基部骨折の3種類に分類されています。手術的治療が基本であり、その後のリハビリが今後の見通しに大変重要です。
2番目に多い疾患は高齢者の脊椎圧迫骨折で、骨粗しょう症のある患者さんに発症しやすいものです。転倒以外にも重い荷物を抱えたり、はっきり原因がなく発症することがあります。治療の基本は適度の安静とリハビリであり、治療ように長いコルセット着用を指導しています。
3番目に多い疾患は骨盤骨折であり。恥骨部・坐骨部・仙骨部の骨折が多いです。高齢者以外でも交通事故や転落などでは輸血や手術を必要とするような多発骨盤骨折や寛骨臼骨折などを発症し、全身状態に注意を要する疾患です。

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数
(自院)
平均在院日数
(全国)
転院率 平均年齢
040080x1xxx0xx 肺炎、急性気管支炎、急性細気管支炎 101 4.25 12.15 0.00% 2.72
150010xxxxx0xx ウイルス性腸炎 87 2.93 5.50 0.00% 4.02
040100xxxxx00x 喘息 71 4.45 6.31 0.00% 4.75

地域中核病院における小児科において最も入院診療の対象となる疾患のメインは感染症です。

その中で最も多い診断群は肺炎・気管支炎・細気管支炎の呼吸器疾患です。いわゆる風邪に罹患しやすい小児においては、上気道炎で止まる大人と違い、その解剖および生理・免疫学的特徴から安易に気管支肺へと進展します。そしてRSウィルスを代表とするウィルス性もあれば、二次感染を併発するなどして急速に呼吸困難に陥ります。しかるべきときに適切な対応がされないと命にもかかわる診断群です。

2番目に多い疾患はウィルス性胃腸炎です。多くはウィルス性で対症療法になりますが、小児は細胞内水分量が多い、不感蒸泄(呼気や皮膚・粘膜から蒸発する水分のこと)が多い等の理由から発熱・嘔吐・下痢により容易に脱水を起こします。その代表であるロタウィルスは発展途上国を中心に年間数十万人が死亡していると推定されています。適切な輸液療法を施行することが重要です。

3番目に多い疾患は喘息発作です。これは厳密には感染症とは異なりますが、増悪因子としての感染症はやはり重要です。気管支喘息治療・管理ガイドラインの浸透によってコントロールが改善したとはいえ、現在でも感染による増悪、あるいは重積発作がみられ、酸素投与、全身性ステロイド投与を必要とする症例は多いです。

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数
(自院)
平均在院日数
(全国)
転院率 平均年齢
110070xx0200xx 膀胱腫瘍 34 11.18 7.59 0.00% 79.06
110310xx99xxxx 腎臓または尿路の感染症 19 9.16 12.60 0.00% 73.42
110070xx99x20x 膀胱腫瘍 12 8.08 12.36 0.00% 69.33

泌尿器科の症例数上位3位の中で一番症例数が多い方は、膀胱腫瘍にて経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行している方です。2番目に多い患者さまは、尿路感染症で、高齢者特に女性に多い疾患です。3番目に多い疾患は、膀胱腫瘍の手術なしに該当する患者さまです。

DPCコード DPC名称 患者数 平均在院日数
(自院)
平均在院日数
(全国)
転院率 平均年齢
040080x099x0xx 肺炎、急性気管支炎、急性細気管支炎(15歳以上) 57 18.51 14.34 17.54% 81.00
050130xx99000x 心不全 21 22.76 18.30 4.76% 85.33
040081xx99x00x 誤嚥性肺炎 18 25.22 21.69 16.67% 85.89

総合診療科では複数の病気をお持ちの方や原因のわからない症状があり、どの診療科にかかったら良いかわからない方を担当しています。そのため、当科にはご高齢で複数の持病を持ち、持病を悪化させたり、新たな病気を発症し入院される方の比率が多いです。

入院での治療の対象となった病気を見てみますと、肺炎や心不全が多く、病気の発症や悪化には年齢や生活環境が大きく関わっています。総合診療科では原因となった病気を治すためではなく、持病や療養の環境も含め、退院後の生活がより安心で快適になるように考えて診療を進めております。

初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
初発 再発 病期分類基準(※) 版数
Stage I Stage II Stage III Stage IV 不明
胃癌 11 1 7
大腸癌 12 1 7
乳癌 1 7
肺癌 13 24 41 1 7
肝癌 12 1 7

※ 1:UICC TNM分類,2:癌取扱い規約

・2015年度に最も医療資源を投入した傷病名が5大癌の患者さんについて、初発患者はTNM分類による分類を、再発患者は期間内の件数を示しています。
※「-」は、症例数が10件未満のため非表示となっています。

1.用語解説

・5大癌とは:
胃癌、大腸癌、乳癌、肺癌、肝癌を5つの主要癌と定義しています。
・UICCとは:
International Union Against Cancer【国際対がん連合】という組織のことです。
・病期分類はどのように行うか:
UICCではTNM分類法に基づき各部位の癌に対し病期分類を行っています。
・TNMとは:
T-原発腫瘍の進展範囲
N-所属リンパ節転移の有無と進展範囲
M-遠隔転移(例:肺癌が脳に転移した)の有無
を判断基準として、病期を分類していきます。Stage0−StageⅣの分類があり、TNMの基準は癌の部位によって異なります。
・初発とは:
当院(自施設)において、当該腫瘍に診断、診断と初回治療、あるいは初回治療を実施した場合を指します。
・再発とは:
当院(自施設)・他院(他施設)を問わず初回治療が完了した後、自施設にて患者を診療した場合や、治療寛解後に局所に再度発生または新たな遠隔転移をきたした場合を指します。
・最も医療資源を投入した傷病名とは:
当該入院期間に、医療従事者の関与・材料・薬剤・医療費・時間を最も使用し、総合的に判断した傷病名です。

2.診療科コメント

【胃癌・大腸癌・肝癌】
胃癌についてはStageⅠが多くなっています。これは当院が健診センターを併設しており、早期癌で見つかる方が多いと考えられますし、外来に定期通院されている方でも年に1回の内視鏡検査を勧めていることが考えられます。早期胃癌全てが胃カメラで切除できる訳ではありませんが、患者さんとよく話し合った上で、絶対的適応のある症例だけでなく、以前は外科手術を必要とされていた相対的適応(2cmを超える高分化型腺癌や2cm未満の未分化癌など)の症例に関しても積極的に内視鏡治療を行っています。
肝癌については、残念ながらStageⅣの進行した状態で来院される方が多くなっています。そのようなかなり進行した状態で来院されても、治療は決してあきらめず、肝予備能を見ながらソラフェニブ内服治療を行ったり、症状緩和治療を行っています。
大腸癌については、StageⅢが多くなっています。これは大腸癌による血便、腹部膨満感、疼痛が起こるようになってから受診される方が多いのだと推測されます。外科医と相談しながら原則的に手術治療を勧めています。手術ができないような全身状態が不良な方でも、癌による狭窄症状に対して金属ステントを留置して症状緩和に努めています。
【肺癌】
肺癌は外来通院で診断ならびに遠隔転移の検査・評価を行い、臨床病期Ⅰ・Ⅱ期は主として外科的手術となるため、呼吸器内科に入院となることは原則ありません。手術は熊本大学付属病院呼吸器外科の応援を得て当院外科で受けることができます。また場合によっては熊本市内の基幹病院に紹介することもできます。臨床病期Ⅲ・Ⅳ期は主として放射線治療、化学療法の適応となりますので主に当院入院で治療を行います。がんセンター勤務の経験のある医師や多くの治療を行ってきた医師がカンファレンスを行い、抗癌剤、分子標的治療薬、最近はがん免疫治療については、日常生活・QOLをできる限り保ちながら外来で治療を受けていただけるようにしています。放射線治療につきましては、当院にその施設はございませんが、荒尾市民病院放射線治療科と連携を結んでおりますので安心して受けていただくことができます。
【総合診療科的視点】
「がん」を持たれている方は、「がん」そのものの症状に加え、治療の副作用、精神的な負担、仕事や家庭などの環境変化にも悩まされます。総合診療科では「がん」の種類や病期にかかわらず、治療や生活の質が維持できるように、他の診療科のサポート、終末期の管理も対応しております。
成人市中肺炎の重症度別患者数等
患者数 平均在院日数 平均年齢
重症度 0 33 12.55 53.52
重症度 1 83 16.49 81.17
重症度 2 80 21.63 83.25
重症度 3 26 31.81 83.92
重症度 4
重症度 5

・2015年度に最も医療資源を投入した傷病名が肺炎で退院した患者さんのDPCのA-DROPスコアから、算出しました。
※「-」は、症例数が10件未満のため非表示となっています。

1.用語解説

・A-DROPスコアとは:
市中肺炎ガイドラインによる重症度分類で、指標は5項目の頭文字をとったものです。
1)Age(年齢):男性70歳以上、女性75歳以上
2)Dehydration(脱水):BUN_21mg/ml以上、または脱水あり
3)Respiration(呼吸状態):SpO2_90%以下
4)Orientation(意識障害):意識障害あり
5)Pressure(血圧):血圧(収縮期)90mmHg以下
※5点満点で、1項目該当すれば1点、2項目該当すれば2点…となります。
ショックがあれば1項目のみでも超重症となります。
・市中肺炎とは:
社会生活を送っている中で発症した肺炎のことです。医療機関に入院して48時間以後に発症した院内肺炎と区別されます。
・DPC(Diagnosis Procedure Combination)【診断群分類】とは:
入院医療における診断群分類に基づいて評価される入院1日当たりの定額支払制度で使用される分類で、その入院期間のうち最も医療資源を投入した傷病名を基準に、手術を行ったかどうか、定義された処置・検査等を行ったかどうかで、1日当たりの入院費が決定されます。
・最も医療資源を投入した傷病名とは:
当該入院期間に、医療従事者・材料・薬剤・医療費・時間を最も使用し、総合的に判断した傷病名です。

2.計算式

・平均在院日数=
分子:A-DROP重症度別の総在院日数
分母:A-DROP重症度別の患者数

3.診療科コメント

最近は肺炎に罹患された患者さんが早期に受診していただけるようになりましたので、比較的軽症のうちに入院・治療が開始されてその治療成績もかなり良好となっています。しかし中には重症(4、5度)で人工呼吸管理ならびに全身管理を必要とする場合もあります。当院はICU(集中治療室)を有し、人工呼吸器につきましても非侵襲的な(気管チューブを挿入しないでマスク換気を行う)ものや高機能なものなど多数常備しています。これらを駆使して経験豊富で人工呼吸に精通した医師・看護スタッフが治療・看護に当たっています。

脳梗塞のICD10別患者数等
ICD10 傷病名 発症日から 患者数 平均在院日数 平均年齢 転院率
G45$ 一過性脳虚血発作及び関連症候群
I63$ 脳梗塞 3日以内 77 33.70 80.01 36.59%
その他
I65$ 脳実質外動脈の閉塞及び狭窄,脳梗塞に至らなかったもの

・2015年度に最も医療資源を投入した傷病名が「脳梗塞」によって退院した患者さまをICD-10別に集計しました。
※「-」は、症例数が10件未満のため非表示となっています。

1.用語解説

・ICD(International Classification of Diseases)【国際疾病分類】とは:
死因や疾病の国際的な統計基準として世界保健機関(WHO)によって作成されている分類であり、日本においては第10版2003年度版が採用されています。

ICD-10脳梗塞分類

・G450-G459:
一過性脳虚血発作および関連症候群
・I630-I639:
脳梗塞
・I650-I659:
脳実質外動脈の閉塞および狭窄、脳梗塞に至らなかったもの

当院では上記3分類に該当する患者さんが入院されました。

・最も医療資源を投入した傷病名とは:
当該入院期間に、医療従事者の関与・材料・薬剤・医療費・時間を最も使用し、総合的に判断した傷病名です。

2.計算式

・平均在院日数=
分子:国際疾病分類の脳梗塞の総在院日数
分母:国際疾病分類の脳梗塞の患者数
・転院率=
分子:DPC調査結果における、退院先(他の病院・診療所への転院)となった件数
分母:国際疾病分類の脳梗塞の患者数

3.診療科コメント

当院は、回復期リハビリテーション病棟を設置しており、脳梗塞で入院された患者さんの意向により、急性期治療→慢性期・回復期リハビリテーションの実施→リハビリテーション後の在宅復帰までを継続して行うシームレスケアを基本方針とした、トータルサポートを実践しています。

診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)

・2015年度に退院された、DPC対象の患者さんの主たる手術別の件数を集計し、診療科別の上位5位までを表示しています。
・輸血(K920$)は対象外です。
※「-」は、症例数が10件未満のため非表示となっています。

1.用語解説

・Kコードとは:
診療報酬医科点数表に定められた手術に付与されたコードです。
・DPC(Diagnosis Procedure Combination)【診断群分類】とは:
入院医療における診断群分類に基づいて評価される入院1日当たりの定額支払い制度で使用される分類で、その入院期間のうち最も医療資源を投入した傷病名を基準に、手術を行ったかどうか、定義された処置・検査等を行ったかどうかで、1日当たりの入院費が決定されます。
・最も医療資源を投入した傷病名とは:
当該入院期間に、医療従事者の関与・材料・薬剤・医療費・時間を最も使用し、総合的に判断した傷病名です。

・術前平均日数は、各術式の入院日から術日までの日数を平均したものです。(術日は除きます)

・術後平均日数は、各術式の術日から退院日までの日数を平均したものです。(術日は除きます)

2.計算式

・術前平均日数=
分子:診療報酬医科点数表手術コード(Kコード)別の入院日〜術日までの総入院日数
分母:診療報酬医科点数表手術コード(Kコード)別の症例数
・平均在院日数=
分子:診療報酬医科点数表手術コード(Kコード)別の術日〜退院日までの総入院日数
分母:診療報酬医科点数表手術コード(Kコード)別の症例数
Kコード 名称 患者数 平均術前日数 平均術後日数 転院率 平均年齢
K6335 鼠径ヘルニア手術 35 1.89 6.60 2.86% 71.17
K672-2 腹腔鏡下胆嚢摘出術 27 1.41 10.22 0.00% 65.63
K718-22 腹腔鏡下虫垂切除術(虫垂周囲膿瘍を伴うもの) 14 0.29 8.29 7.14% 50.86

胆嚢摘出、虫垂炎手術に関しては、多くの腹腔鏡下手術を行っています。

Kコード 名称 患者数 平均術前日数 平均術後日数 転院率 平均年齢
K5493 経皮的冠動脈ステント留置術(その他) 31 5.29 4.97 3.23% 69.90
K5972 ペースメーカー移植術(経静脈電極) 12 3.33 11.67 16.67% 80.75
K5492 経皮的冠動脈ステント留置術(不安定狭心症)

当科で急性期の治療を行い、その後病状が安定していれば、地域の医療機関に継続的なフォローアップを依頼しています。日常診療ではエビデンス、ガイドラインをふまえたスタンダードで適切な医療を提供できるように心がけております。

Kコード 名称 患者数 平均術前日数 平均術後日数 転院率 平均年齢
K7211 内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm未満) 41 1.22 1.98 0.00% 70.95
K688 内視鏡的胆道ステント留置術 35 3.11 9.57 25.71% 81.31
K654 内視鏡的消化管止血術 25 0.52 13.44 16.00% 72.56

内視鏡的ポリープ・粘膜切除術については高齢者や合併症がある方は2泊3日の短期間で入院治療を行っています。
内視鏡的胆道ステント留置術は、胆管炎や閉塞性黄疸に対して行っています。診断がつき次第可及的速やかに施行しており、高齢者が多いにもかかわらず、2週間以内での退院を可能にしています。
内視鏡的止血術については吐下血などの消化管出血が疑われた場合には原則24時間以内に内視鏡検査を行っています。高齢者や合併症のある方が多い割には、多くの患者さまで2週間以内の退院が可能となっています。

Kコード 名称 患者数 平均術前日数 平均術後日数 転院率 平均年齢
K610-3 内シャント留置術 15 3.20 3.67 0.00% 67.33
K616-4 経皮的シャント拡張術・血栓除去術
K607−3 上腕動脈表在化法

当科は上記のように、透析患者さんのかかりつけ医としての役割を果たすため、透析アクセス関連手術(内シャント留置術)を行っています。
なお、K616-4 経皮的シャント拡張術・血栓除去術に関しては、基本的に日帰り手術にて施行しています。

Kコード 名称 患者数 平均術前日数 平均術後日数 転院率 平均年齢
K0461 骨折観血的手術(大腿) 188 3.78 42.42 42.02% 81.78
K0462 骨折観血的手術(下腿) 79 2.81 26.81 6.33% 61.33
K0821 人工関節置換術(膝) 44 4.00 1.52 56.09 9.09

大腿骨の中でも大腿骨近位骨折に対する手術件数が最も多く。大腿骨転子部骨折に対して骨接合術、大腿骨頸部骨折に対して骨接合術と人工骨頭置換術を行っています。多くは高齢者が対象となるため、全身状態の精査と受傷日より早期での手術に努めています。
2番目に多い手術は下腿部の骨折で、高齢者から若年者まで幅広く入院されています。件数が多いのは膝関節周囲と足関節周囲の関節内骨折で、正確な整復と強固な内固定を目標に治療しています。
3番目に多い手術は、膝関節置換術で変形性膝関節症や関節リウマチによる膝痛が対象疾患となっています。合併症予防、術後の除痛、関節可動域訓練・歩行訓練を積極的に行い、早期の社会復帰を目指して治療を行っています。

Kコード 名称 患者数 平均術前日数 平均術後日数 転院率 平均年齢
K8036 膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的手術)(その他) 34 2.50 7.68 0.00% 79.06
K783-2 経尿道的尿管ステント留置術 21 2.90 11.10 14.29% 71.90
K843 前立腺悪性腫瘍手術

泌尿器科として最も多い手術は、経尿道的膀胱悪性腫瘍手術で34件実施しています。2番目に多い手術は、尿管ステント留置術で、21件実施しています。

その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)
DPC 傷病名 入院契機 症例数 発生率
130100 播種性血管内凝固症候群 同一 10 0.22%
異なる 22 0.48%
180010 敗血症 同一 17 0.37%
異なる 40 0.88%
180035 その他の真菌感染症 同一
異なる
180040 手術・処置等の合併症 同一 41 0.90%
異なる

・今回は医療の質を評価するために播種性血管内凝固症候群(DIC)、敗血症、真菌症、手術・処置等の合併症の発生率について公表することとなりました。
・最も医療資源を投入した傷病名が上記4つの入院契機となった傷病名と同じかどうか分けて集計しています。
・傷病名(最も医療資源を投入した傷病名)が入院契機となった傷病名と異なる場合、今回の入院目的よりも、入院中に発生した上記4疾病のほうが、より医療資源を投入したということになります。
※「-」は、症例数が10件未満のため非表示となっています。

1.用語解説

・播種性血管内凝固症候群(DIC)とは:
感染症、悪性腫瘍、外傷、手術の侵襲などが原因となり、血液が固まる力が高まり、体中の様々なところで血のかたまり(血栓)ができ、臓器の機能障害が起こるとともに、血小板の血液凝固に必要な成分が大量に消費されるため、出血が止まらない状態のことです。
・敗血症とは:
感染に対する体の反応が調節できなくなり、命に関わるような臓器障害が起きてしまうことです。
・真菌症とは:
酵母、カビ、キノコの仲間を総称して真菌と呼びますが、有害な真菌が病気を起こすことを真菌症と呼びます。真菌が皮膚にとどまる白癬症(水虫)のような表在性真菌症と抵抗力の落ちた人や手術や治療のために体に異物が入っている人などに見られる真菌が内臓まで及び深在性真菌症があります。
・手術・処置等の合併症とは:
術後感染、体内に挿入した機器の異常、適切に投与された薬剤のショック等であり、そのリスクについては術前に十分に説明を行い、適切な予防に努めています。合併症で重要となるのは予防と早期発見であり、入院直後より観察すべき項目を十分に検討して実施しています。
・最も医療資源を投入した傷病名とは:
当該入院期間に、医療従事者・材料・薬剤・医療費・時間に基づき、総合的に判断した傷病名です。
・入院契機となった傷病名とは:
今回入院し治療する必要があると判断される傷病名です。

2016/9/29 2015年度診療指標を公表しました。

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